こんにちは。学校は夏休みに入りいろいろとお出かけになる季節ですね。当館では、7月12日から酒資料室で「お酒づくりの道具と機械」と題した展示を開催しておりますので、こちらへもぜひご来場ください。今回の酒トークでは、この展示を開催するにあたり、他の地方へ調査に行った際の様子をご紹介しようと思います。
上方で始まった清酒産業は、江戸時代の内に南は九州から北は東北まで全国的に行われるようになりました。では、全国的に使用している道具は全く同じ道具を使っているのでしょうか。実はサイズに違いはあれど、大半は同じ道具が使用されていたと考えられます。しかし、一部には地域性が見られ、工夫の跡のようにも思えます。それでは実際に調査した酒造道具について見ていきましょう。
4月に伺った九州の佐賀県多久市内には、国指定重要有形民俗文化財になっている酒造道具があります。灘の酒造道具と違い竹材をよく使用している点で特徴的です。竹を使用した道具を挙げると、せんべいぼう(蒸米の具合を見るためにこの道具で蒸米を押し潰して餅状の物をつくる道具、灘等他の地域では「ぶんじ」が使われています)・あわまき(醪の泡が桶からあふれないように桶の縁に巻く道具)等があります。いずれも灘では違う形状や素材を使用した道具が使用されており、竹が豊富な佐賀ならではの工夫と言えます。
続いて5月に伺った東北は岩手県花巻市石鳥谷にも、国指定重要有形民俗文化財となっている酒造道具があります。灘で使用している桶と比べると、一見して桶の色が濃い印象を受けます。これは、土地の気候により道具の保存や衛生上の問題から桶に柿渋を塗るためです。また、当地の記録を読むと桶の箍には漆を塗っている記録が残されています。
明治に入り、全国の酒造家たちは一番の技術を誇る灘の酒造技術を学びました。この時、道具自体もある程度画一化したとも考えられますが、今回の調査からは一定程度地域性を残していたことも確認できました。その後、木製の酒造道具は次第に機械へと転換し、一層画一化していくことになります。 まだまだご紹介したい内容もありますが、開催中の展示で木製酒造道具の地域性や呼び名の違い、そして機械への転換について詳しくご紹介していますので、酒トークを読んでご興味をお持ち頂きましたら、ぜひこちらもご覧頂ければと思います。それでは、来月もどうぞよろしくお願い申し上げます。
酒蔵の中にはいろいろな設備が調ってるんやで。