江戸時代の滑稽本から学ぶ「こんな酒癖はイヤだ」

2022.04.01

 こんにちは。今日から新年度に入り、人事異動や転勤、進級・進学など、新たな出会いの季節となりました。例年であれば、この時期は送別会に引き続き歓迎会など、酒の席が増える時期となっていたのではないでしょうか。そんな楽しい酒の席では、いわゆる「酒の失敗」に気を付けたいところです。そういう訳で今回は、酒に酔った時に引き出される、人それぞれの酒癖を面白く紹介した江戸時代の滑稽本『つきぬ泉』から、「こんな酒癖はイヤだ」な事例を見ていきましょう。

①怒り上戸(おこりじょうご)

 「酔(よう)たにかこつけ、さもなきことを仰山に罵り手迫りある皿鉢を取(とり)てなげ、落花みぢんにくだく事なり」と紹介されています。つまり、お酒に酔ったのを口実に、些細なことを罵って、近くにある食器を投げつけて割ってしまうような人を、怒り上戸としています。こうなったら手が付けられないですね。怒り上戸はできればこの本の中だけの存在であって欲しいものです。

 ②多言上戸(たごんじょうご)

 「五・六杯きこしめせば何となく口かろく、次第にさけの過ぎるほど、問わずがたりの身のうへばなし、人のかげ言・世の雑談つづき・・・」と紹介されています。つまり、だんだん酒が進むにつれ口が軽くなり、聞かれてもいない自分の経験・他人の陰口・世の中の取り留めのない話を続けていくことを多言上戸としています。このあたりからは、ちょっと身に覚えのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 ③笑い上戸(わらいじょうご)

 「わらひ上戸は世に希なるものにて・・・酒を呑んで笑い談ずるは常のことにて酒の癖といふべからず、実のわらひ上戸はおかしくもあらぬことを腹をよらして笑ひ入、ほとんどわらひ中風という病の如く自留所(みずからとどまるところ)なきをいうなり」と紹介されています。つまり、笑い上戸は世の中に珍しい存在で、酒を呑んで談笑するのはよくあることで酒癖というべきではありません。本物の笑い上戸とはおかしくもないことを腹を揺らして笑い、病のように自制できない状態としています。酒が進むと笑顔が増えるというものですが、周りが付いて行けない程の笑いっぷりは、困った酒癖なのかも知れません。

 いかがだったでしょうか。強烈なものから身近なものまで様々ですが、どれも敬遠したくなるような酒癖と言えるのではないでしょうか。この他にも『つきぬ泉』には多くの酒癖が紹介されています。人づきあいを円滑にしてくれる酒の力も、過ぎるとこのような酒癖を呼び出してしまうのかもしれません。皆様には今回ご紹介した江戸時代から続く酒癖を肴に、楽しい酒の席を心がけていただければと思います。それでは、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

酒くん

酒造りの奥深さを、存分にお伝えするで。

桜子ちゃん

お酒にも、桜と同じように人に愛されてきた歴史があるのね。