こんにちは。2月に入り寒さが一層厳しくなってきました。そんな中、酒ミュージアムのある西宮では、今年も今日から3月1日まで毎週土曜日蔵開きが行われます。各社個性のある催しを用意されていますので、是非お越しください。さて、本日は昨年末に「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを記念して、明治から昭和初期にかけて行なわれていた伝統的酒造りの工程をご紹介します。
これまでの酒トークでもご紹介してきましたように、日本酒の原料は米・水・麹です。ここからは、これらの原料がどのような工程を経て日本酒になるのかについてご紹介します。原料の1つである米は、精米場で精白されて酒蔵に運び込まれます。そして、酒蔵ではこの精白された米についている糠などを洗い流す洗米作業から始まります。近代以降様々な工程で酒造機械の導入が進みますが、それ以前の洗米工程では踏み桶に米と水を入れ、その中で蔵人が合計150回程度足踏みをすることで米を洗っていました。寒い酒蔵の中で冷たい水に足を入れなければならず、蔵人にとって大変厳しい作業でした。
洗米が終わると、米に水を吸わせてから蒸米作業に移ります。酒蔵の中には釜場と呼ばれる設備があり、そこに大きな釜を据えて湯を沸かし、これまた大きな甑と呼ばれる米を蒸す専用の桶を釜の上に設置して蒸気を使って米を蒸し上げます。米の蒸し具合は「ひねり餅」をつくって杜氏が判断します。蒸し具合は米の質や米が吸った水の量によって異なるため、酒造りに適した蒸し具合を見極めることが重要です。蒸しあがると、「ぶんじ」と呼ばれる道具をスコップのように使って米を掘り出し、次の工程で使用するため、莚の上に広げて米を冷まします。
こうして蒸し上がった米の一部を麹造りに使用します。酒蔵の中に設置された麹室と呼ばれる部屋に蒸米を取り込み、そこに「種麹」や「もやし」と呼ばれる麹菌を振りかけます。すると、蒸米の中に麹菌が入り込み、約2日かけて麹米へと変化します。麹室の中は麹菌の働きを活性化させるために温められており、寒い中行う他の作業と打って変わって写真のようにもろ肌を脱いで作業を行っていました。こうして日本独特のバラ麹が出来上がります。ユネスコ無形文化遺産登録に関する審査では、日本独自の麹菌を使用していることが評価されたといわれています。
ここまで酒造りの前編として麹造りまでの工程をご紹介しました。次回後編では仕込み工程をご紹介したいと思います。それでは来月もどうぞよろしくお願い申し上げます。
華やかやな~!