こんにちは。2021年3月に始まった酒トークも4年目に入りました。いつもご覧いただき有難うございます。50回目となる今回も前回に引き続き明治から昭和にかけて行なわれていた伝統的酒造りの工程についてご紹介します。
前回の酒トークでは麹造り工程までご紹介しました。今回からはいよいよ仕込み工程に入ります。日本酒の仕込み工程には2段階あり、初めに行われるのが酛(酒母)造り工程です。最も伝統的な生酛造りの場合、蔵人たちは「半切」と呼ばれる小さな桶を使って、米・麹・水をすり潰したり混ぜ合わせたりする作業を行います。何人もの蔵人が同じ作業を行いますが、できるだけ個人差が出ないように、酒造り唄を歌って調子を合わせていました。この生酛造り工程には、約一か月を要していました。
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酛造り工程に続いて行われるのが醪造り工程です。醪造り工程では、先ほどの酛に蒸米・麹・水を留・仲・添と称して、3回に分けて添加する三段仕込みを行います。添加が終わると、「筋(蟹)泡」「水泡」「岩泡」「高泡」「落泡」「玉泡」といった名前が付けられているように、日ごとに変化する醪の様子を見守り、適宜櫂入れをして攪拌します。このような醪の泡は、醪の状態を把握するのに役立つ一方で、泡が出来過ぎて桶の外に醪があふれ出すこともあり厄介な存在でもありました。蔵人はこれを防ぐために当番で寝ずに泡を消す必要がありました。このような醪造りは完成まで約20日を要します。

こうして出来た醪を搾るとようやく日本酒が完成します。圧搾の工程では、醪を酒袋に入れて「槽(ふね)」と呼ばれる道具で搾ります。そして搾られた酒は地中に埋めた甕に溜まり、これを桶にすくい上げます。酒袋には搾り粕である酒粕が残っているため、粕はがし作業も必要でした。この圧搾工程は全酒造労働の1/3に相当すると言われる程ハードな仕事で、近代に入るとポンプや水圧・油圧機、昭和後半には酒袋を必要としない圧搾機が開発・導入されました。

搾られた酒は、酒を腐らせる火落菌対策として60~65℃に熱する殺菌処理が行われ、貯蔵期間を経て市場に出荷されます。 前回今回とご紹介したように伝統的酒造りの工程はとても複雑です。科学技術が西洋からもたらされる以前から、経験の蓄積によってこの複雑な工程を確立したことには驚かれる方も多いのではないでしょうか。酒ミュージアムでは、酒蔵館で工程ごとに使用する道具を常設でご紹介しておりますので、是非ご覧ください。それでは来月もどうぞよろしくお願い申し上げます。
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