こんにちは。今回の酒トーク更新日の10月1日は日本酒の日ということで、今年もいよいよお酒の季節がやってきました。酒ミュージアムでは引き続き、酒づくりに関わる微生物の展示「お酒でのぞくミクロな世界」展を開催中です(~11月23日まで)。関連する酒トーク「シリーズ お酒と微生物」最終回の今回は酵母についてご紹介します。
前回ご紹介した麹菌は、数が増えてくると白くもやもやとした様子を肉眼でもみることができますが、その大きさが5㎛(5マイクロメートル=0.005㎜)程の酵母はいくら何でも肉眼でみるのは無理というものです。人の髪の毛の太さが約80㎛とされているので、酵母は髪の毛の太さの1/16の大きさということになります。清酒造りを始めた江戸時代は、目に見えない酵母の存在を知る由もなかったのです。
明治時代に入ると、西洋から来た外国人によって様々な知識や技術などが伝えられます。その中には日本酒を分析する外国人もいて、清酒酵母の研究が進みました。その後、明治29年(1896)には大蔵省に鑑定官が設置され、日本人の間でも清酒酵母の研究が始まります。明治後期頃には独自に酵母を研究する酒蔵も増え始めました。当館に残る明治後期の史料からは、数種類の酵母の発酵能力を比較したり、形状を顕微鏡で観察したりしていたことがわかります。
さて、酵母たちはお酒づくりでどのような役割を果たしているのでしょうか?前回、麹菌が米のデンプンを糖に分解する働きがあるとご紹介しました。清酒酵母の仕事は、糖を食べてアルコールと炭酸ガスを出すところにあります。
清酒酵母にもたくさんの種類があり、特にお酒づくりが得意な酵母たちは日本醸造協会が選抜して「きょうかい酵母」という名前で、全国の酒蔵に販売されています。この他に、地域や酒蔵独自の酵母研究も盛んに行われています。その理由は、酵母は単にアルコールをつくり出すだけでなく、実はお酒の味や香り成分にも係わる微生物だからです。お店に並ぶ酒のラベルに記されている、アルコール度数・日本酒度・酸度といった数値は、酵母の仕事ぶりを数字にしたものとも言えるでしょう。
ここまで3回にわたって、微生物とお酒づくりの関係をご紹介してきました。目には見えない程小さな微生物たちの、意外で偉大な働きぶりを知っていただけたことと思います。これからも、酒トークでは酒にまつわる情報をご紹介しますので、引き続きよろしくお願いします。
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