皆さん、こんにちは。昨年は年4回更新がスタートし、コラム担当者も変更となりましたが、引き続き今年もよろしくお願いいたします。
おせち料理やお年玉など、お正月といえばというものはたくさんありますが、そのうちのひとつである年賀状は、最近は少し影が薄くなってきているかもしれません。メールやSNS上のメッセージで済ませるという人も多いかと思います。ですが、12月に入るとどんなデザインで、誰に送るのか、クリスマスそっちのけで頭を悩ませる人もまだまだいることでしょう。
これまでの投稿や展示紹介でもうご存じかと思いますが、笹部さんは身の回りのものは何でも桜で揃えるという「櫻男」でした。そんな笹部さんのことなので、年賀状のテーマも干支や縁起物に関わらず、毎年桜としていました。
前回の蔵書紹介でも少し触れましたが、笹部さんは気に入った挿絵を見つけると、その絵柄を基として年賀状の版を作っていました。
たとえばこの『千もとの華(ちもとのはな)』という狂歌集からは、寝そべって老眼鏡を片手に桜を見るおじいさんの挿絵を利用した昭和27(1952)年と、桜の大樹の寸法を測る様子を描いた挿絵を利用した昭和29(1954)年の年賀状を作っています。
購入時につけている記録『櫻文献控Ⅵ』には「狂歌と云ふもの歌詞も画も、とかく月並のつまらないものが多いのに、この本の歌詞には捨て難いものが少くない」と記しており、挿絵も本文も非常に気に入っていた様子が窺えます。
また、『津国遊覧狂歌集(つのくにゆうらんきょうかしゅう)』という狂歌集からは昭和26(1951)年の年賀状を作っていますが、この時に使用した桜の木を運搬する挿絵のページには、年賀状の文面を思案したメモ用紙が挟み込まれています。この本については「この本を求めたのも、桜文献中に編入したのも中ノ十一頁(ページ)に池田植木として二人の植木屋が満開の花をつけた山桜を運搬してゐる画に添へての狂歌 根こし賣(う)る池田の桜さく頃は なにはの市にかよふしら雲 白羽堂 を面白いと見てのことである(カッコ内ルビは後補)」と購入控に記しており、このページが目当てで購入を決めたほど琴線に触れた様子が伝わってきます。
これらの本以外にも、和本の挿絵や巻子から絵柄を拝借し、自分好みの桜の年賀状を作っていました。笹部さんは昭和53(1978)年の12月19日にこの世を去りましたが、実は翌年昭和54(1979)年用の年賀状も用意していました。この年の版の絵柄は昭和36(1961)年と同じものを利用していました。
今回紹介した年賀状や基になった和本は、現在開催中の冬季展「櫻男・笹部新太郎の本棚」の廊下展示にてすべてご覧いただけます。
前回の桜つれづれでご紹介した雑誌や図鑑をはじめとして、笹部さんの蔵書に焦点を当てた資料を展示しています。是非とも足を運んで、笹部さんの本棚に思いを馳せていただけますと幸いです。
次回もお楽しみに!
桜を描くことへの情熱を感じるわ!!