皆さん、こんにちは。ようやく暑さも一段落して、過ごしやすい気候が続くようになりました。酒ミュージアムでは引き続き桜資料室展示「知ってる?桜のひみつ」を開催中です。文化の秋に是非足を運んでいただければと思います。
さて、秋といえば紅葉狩りの季節でもあります。桜も紅葉する品種で、秋になると緑色だった葉が赤や黄色に変わります。博物館の駐車場にある「西宮権現平桜」も、秋になるとすっかり様変わりします。
笹部さんが接木や農薬等の桜を育てる実験をしていた演習林「亦楽山荘(宝塚市武田尾)」には、様々な品種の桜が植えられており、春には長い期間お花見を楽しむことができました。ですが、亦楽山荘の見頃は春だけではありません。
笹部さんは桜を大切にしていましたが、桜の木単体だけではなく、他の植物との取り合わせがあってこそ、桜のある景観はより良いものになると考えていました。
笹部さんは昭和16年(1941)に三重県の湯の山温泉へ山桜の植付けに行っています。湯の山は紅葉をはじめとして四季折々の美しい風景を楽しめる場所であり、春には桜も山々を彩ります。笹部さんは湯の山の景観について、「桜あっての楓、楓あっての桜」の組み合わせが渓流とあいまって素晴らしいと述べており、自身が戦後に作った桜名所番付では大関に据えるほど気に入っていました。
作業日誌である『亦楽山荘記録』を見てみると、整備し始めて数年のうちの記録には、山楓(ヤマモミジ)を植えたという記述が度々出てきます。ある年には一度に500本以上もの様々な品種のもみじを用意して植えたそうです。
また、秋には知人を招いて観楓を楽しんでいました。『亦楽山荘記録』からは桜と同じように紅葉も愛でる様子もうかがうことができます。
現在の亦楽山荘も桜の名所としては勿論、紅葉の名所としても親しまれており、秋になるともみじや桜をはじめとした紅葉を楽しみに、ハイカーがたくさん訪れています。
そんな桜ともみじの取り合わせですが、実は特別な呼び名がついているのはご存じでしょうか。「雲錦(うんきん)」といい、満開の桜を白い雲に、鮮やかなもみじを錦にたとえた言葉で、陶磁器や着物の柄によく用いられています。笹部さんは桜があしらわれた美術工芸品を収集していましたが、雲錦となるとあまりにも数が多すぎるため、収集の対象からは外していました。
とはいえ、惹かれるものがあったのか、何点かの作品がコレクションには収められています。
皆さんも紅葉狩りに出かける際には、笹部さんのように桜との取り合わせを想像しながら楽しんでみてはいかがでしょうか。
次回もお楽しみに!
みなさんは桜の種を見たことがあるかしら?