みなさん、こんにちは。長々と続いた暑さもようやく和らぎ、過ごしやすい季節になってきました。桜の木も昼夜の寒暖差を感じ、紅葉の準備を進めているようです。
現在笹部さくら資料室では、市制100周年を迎えた西宮市と笹部新太郎さんの関係を深掘りする企画展「笹部新太郎と桜のまち・西宮」を開催中です。今回のコラムでは、展示でも取り上げている西宮市のオリジナル桜についてご紹介します。
一般的に桜として思い浮かべることの多い「染井吉野」は、江戸時代の終わり頃にできた品種です。花つきがよく、生育が早い上に増殖しやすいことから、明治時代の近代化に伴い全国で植樹されましたが、病気の罹りやすさや高齢化による樹勢の衰えなどの問題も抱えています。笹部さんはこの問題を解決するために、染井吉野に代わる観賞性が高くて育てやすい桜を生み出そうという思いを持っていました。実生の研究やササベザクラもその思いが形になったものです。
笹部さんの遺志を継ぎ、さくらコレクションを有する西宮市も、市花である桜の研究に熱心に取り組んでいます。現在オリジナル桜は5品種ありますが、そのうち2種類が笹部さんにゆかりのある桜でもあります。
酒ミュージアムの駐車場でも見られる「西宮権現平桜」は、以前もご紹介したように、笹部さんが生前に日本一として称えていた紀州権現平の桜から生まれました。白色から色変わりする大輪の花が特徴で、生育が早く耐潮性も高いことから、海の近くにも植えることができます。

「越水早咲き」はその名の通り、西宮市内の越水浄水場に原木がある品種です。花弁が厚く、中央で少し折れ曲がるように咲くのが特徴です。開花時期は3月中旬から下旬で、染井吉野よりも1週間ほど早く咲きます。越水浄水場では昭和29年(1954)から笹部さんによる桜の植樹と管理指導が行われました。笹部さんは個性豊かな実生の桜を自身の演習林「亦楽山荘」(兵庫県宝塚市)や向日町苗圃(京都府向日市)で育て、各地へ移植する桜の木もここから提供していました。越水早咲きはその時に植えられた桜のうちのひとつではないかと考えられています。


他にも比較的小型で鉢植えでも花が楽しめる「宮の雛桜」や、染井吉野より2週間ほど早い3月中旬から咲き始める「今津紅寒桜」、ひらひらと波打つ花弁で色変わりも楽しめる「夙川舞桜」といったオリジナル桜が西宮市から生まれています。


2025年4月1日には、西宮市役所本庁舎前空間のリニューアル工事完成に伴い、上記のオリジナル桜が記念として植樹されました。各品種の違いを観察できるスポットなので、酒ミュージアムで展示を見た前後にぜひ足を運んでみてくださいね。
次回もお楽しみに!
これから色々知るのが楽しみだわ!