皆さん、こんにちは。早いもので4月半ばになりました。現在当館では、令和3年 春季展「江戸に桜(はな)ひらく」を開催中です。
「江戸」というタイトルから、「どうして関西で東京の展示をやってるの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、実は今回は「江戸」という都市ではなく「江戸時代」という時期に注目し、コレクションを収集した笹部新太郎さんが理想としていた「江戸時代の桜」をテーマにしているんです。
という訳で今回は、展示に興味を持っていただけるよう、少しだけ江戸時代の桜についてご紹介していきたいと思います。
さて、江戸時代の桜といった場合、どのような特徴があげられるでしょうか? 私たちにとって桜とは切っても切り離せない関係にある、「お花見」との関係から見ていきましょう。現代では、春になれば人々は桜のもとに出かけて行って、桜を愛でつつ、飲食を楽しみます。日本では春の風物詩ともいえる光景ですね。
そして、このように人々がお花見に出かけるようになったことこそが、江戸時代に始まった桜の文化なんです。
もう少し詳しくお話していきましょう。17世紀初めに徳川家康が江戸幕府を開いてから、慶応3年(1867)の大政奉還まで約260年の間、安定した政治体制の下で様々な文化が発展していきました。そうした中で、8代将軍・徳川吉宗(在職:1716~1745)の治世には、鷹狩などの目的で将軍が隅田川にあった御殿(東京都墨田区)に出かけた際の楽しみとして、川岸に桜を植えたことが江戸時代の大規模な桜の植付けの始まりになります。同じく吉宗の治世には、東京都品川区の御殿山(ごてんやま)や同北区の飛鳥山(あすかやま)にも植えられました。こうした植付けよって発展した名所は広く人々に開かれ、現代にもつながるお花見の出発点となりました。
もうすぐ前期は終わってしまいますが、これらにちなんだ作品も展示しています。
お花見に出かける行列を描いた歌川貞虎(うたがわさだとら)の「隅田川花見図」(江戸後期)は、縦8.5cmという小ぶりながらも、全てのばすと約1.8mにも及ぶ長大な巻物です。また、「御殿山花見酒宴図」は、「絵金(えきん)」の名前でも知られている林 洞意(はやし とうい)の作品です。桜の下にござを敷いて桜を鑑賞しながら飲食を楽しむという、現代にも通じるようなお花見の様子が描かれています。チラシ・ポスターにも使用した池田英泉(いけだえいせん)「花見之図」(江戸後期)は、後ろの桜並木の間に石碑が見えることから、飛鳥山の様子を描いた作品であると考えられます。
会場では、お花見には欠かせない酒器なども展示しているほか、文学や園芸など、江戸時代に花ひらいたその他の桜文化をご紹介しています。ぜひご来館ください。
次回もお楽しみに!!
左近の桜っていつ頃からあるのかしら?