皆さん、こんにちは。桜の花が散り、春季展も終わり、最近は夏を感じる時期になってきましたね。ですが、春が終わってしまったから桜も見るところがないな、来年の春まで手持無沙汰だな、と思ってしまうのはもったいないですよ。今回は、花以外の桜の魅力にも迫っていきたいと思います。
笹部新太郎さんは花の時期だけでなく、一年通して桜に注目していました。突然そう言われても、なかなか実感がわかないと思いますので、例をあげながらご紹介したいと思います。
たとえば、笹部さんは名桜を判定する基準として、次のものをあげていました。
①花に先立つ嫩芽(どんが。新芽・若芽の意味)の色が良いこと。
②花が散った後の若葉の形が良いこと。
③季節で異なる木の枝の姿が立派であること。
④樹皮に色艶(いろつや)があること。
⑤風雪に耐えることができる樹勢(樹齢・樹高)であること。
もちろん花に関しても、「気品があること」という基準を掲げていますが、①~⑤の項目を見ていただければ、笹部さんが見事に咲いている花だけでなく四季折々の桜に注目していたことを分かっていただけるかと思います。これは笹部さんがしばしば記しているところですが、桜を生き物として見るべきであると考えていたことによります。
これは確かにその通りで、笹部さんの文章を読んでから四季折々の桜の様子を見ていると、実に様々な姿を見せてくれていることに気づきます。たとえば、当館の駐車場に植えてある西宮権現平桜に注目してみましょう。この桜の花期は4月初旬ですので当然今の時期に花は咲いていませんが、今は青々とした葉を茂らせています。
これを見て「すっかり葉桜になっちゃったね」と感じるのも一つの見方ではありますが、遠巻きに眺めてみるだけではなく、近づいて観察してみるのはいかがでしょうか。春はどうしても花に目を向けてしまいがちですが、改めて笹部さんのあげた点を観察してみましょう。
という訳で、少し近づいて写真を撮ってみました。いかがでしょうか? たとえば、西宮権現平桜の枝は写真のようににぶい赤色で光っていますが、このような枝をしていることをご存じなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際に、笹部さんは枝の様子にも着目しており、「いぶし銀」(今では慣用句として使うことが多いですが、本来はくすんだ渋みのある銀色を指します)に光る山桜の梢の様子を見に冬の山に出かけ、花のない季節にも桜の見せる様々な表情に心躍らせていました。
笹部さんの文章を読むと桜に関する視点を新たに知ることができ、まだまだ自分の勉強不足を実感します。実際に桜を観察しながら、皆さんにも桜の新たな楽しみ方をお伝えできればと思います。
次回もお楽しみに!!
桜を描くことへの情熱を感じるわ!!