皆さん、こんにちは。コレクション紹介も4回目を迎え、いよいよ最終回となりました。今回は笹部さんが収集した書物についてご紹介します。世間ではよく「本棚を見ればその人がわかる」と言われていますが、一体笹部さんの蔵書はどのような人柄を語ってくれるのでしょうか?
それでは一緒に見ていきましょう!
笹部さくらコレクションで蔵書として数えられている資料は約4000冊で、和本や洋本、全集や雑誌などの様々な形態にわたって収集されています。一見すると桜には関係が無さそうな資料でも、桜につながるものが意外な部分にあり、そのすべてが「櫻男」である笹部さんを構成しています。
笹部さんはソメイヨシノが主流になるより前、すなわち江戸時代以前の山桜や里桜の多様性を理想の状態と考えていました。その当時の様子を文章や挿絵から知るために、江戸時代の史学書や伝記、地誌、当時隆盛した本草学や園芸などに関する和本を多く収集していました。蔵書のうち約2400冊を和本が占めています。
和本の中でも和歌を集めた本は最も冊数が多く、約1100冊がコレクションに収められています。笹部さんはさらにその中から桜を詠んだお気に入りの歌を集めて、独自の直筆和歌集を作ってもいます。
また、気に入った桜の挿絵があると、自身の年賀状のデザインとして使用していました。実際に挿絵が使われた和本を見ると、笹部さんが挟んだ紙の栞が残っています。
笹部さんは過去を知るための和本だけでなく、最新の情報を得るため、洋本の専門書や図鑑も買い集めていました。日本の植物分類学の草分け的存在である牧野富太郎氏の著書も複数購入しています。
『牧野日本植物図鑑』の購入に際しては、頒布番号の若いものを探しているうちに初刷を見かけなくなってしまい、結局粗製を承知で再刷を買ったという昭和17(1942)年の記録も遺されています。
ほかにも、桜に関する論文の抜き刷りを著者から寄贈してもらった小冊子や、外国の進んだ研究を参考にするべく取り寄せた外国語の文献などもあり、笹部さんの研究熱心な様子が窺い知れます。
蔵書コレクションには笹部さんが寄稿したり、取材を受けたりした雑誌や新聞も含まれています。同じ号が10冊、20冊、時には40冊近くと複数収蔵されているものもありますが、これは何故でしょうか?
現代のようなインターネットもなく、連絡や広報の手段が限られていた当時、笹部さんは自分のことを知ってもらい、桜に関する情報がより多く手元に集まってくるように、自身の掲載された雑誌などを知り合いに送ることで宣伝をしていたようです。
ここで紹介したのはほんの一部ではありますが、桜研究への情熱が伝わってくる蔵書でしたね。これからの笹部さくら資料室では、より深く笹部さんの本棚を掘り下げる機会を設けたいと考えています。
次回もお楽しみに!
笹部さんのとっておきのコレクションを一緒に見ていきましょう!