四方を海に囲まれ多雨で水に恵まれる日本では、水は身近な存在であり、多様な画題となって絵に描かれてきました。はるか高い山から流れ落ちる瀧、荒く白い波しぶきを立てる波濤、穏やかにゆらめく水面、雨の様子。絵の中には、常に動き変化していく水の一瞬が情景としてあらわされています。
この展示では、さまざまに描かれた水の姿を、近世から近代の日本画や工芸品からご紹介します。
Past Exhibitions
江戸時代中後期の約60年間という短い期間に、「三熊派(みくまは)」という画派が京都を中心に活動しました。三熊思孝(みくましこう)・三熊露香(みくまろこう)・広瀬花隠(ひろせかいん)・織田瑟々(おだしつしつ)という4人からなる三熊派は、桜のみを描くことを流儀とし、絵の道に邁進していきました。
三熊派の始祖である思孝は、春になると桜を観察するために全国各地へ出かけ、その成果を活かして桜を描いたと言われています。そうした思孝の姿勢は他の3人にも引き継がれ、細部まで丹念に描き込まれた桜画を遺しています。このように、持てる力の限りを尽くして桜を描いた三熊派の根本には、日本で古くから愛されてきた桜の美しさを、絵画という形で表現したいという思いがありました。
本展示では、三熊派の4人が見出し絵に込めた桜の美しさについて、笹部さくらコレクションに収められた三熊派の掛軸からご紹介します。
節句は一年の節目となる日で、季節の変わり目に邪を払う行事が行われてきました。人日、上巳、端午、七夕、重陽は、五節句として江戸時代には幕府の式日となった他、民間にも広がりました。特に子どもの健やかな成長を願う雛人形や武者人形を飾ることは、現在でも歳時の一つとして続いています。
この展示では、京都の人形司・大木平藏制作の、高さ7㎝前後の人形が15人揃った「二寸雛人形」や、細部にわたり金具や刺繍が施された「飾り具足」など、西宮の酒造家・辰馬家で祝い飾られてきた昭和初期の人形を中心展示いたします。
また、「京の五節句」と題し、丸平大木人形店の資料室・丸平文庫の所蔵作品から五節句にまつわる人形もご紹介いたします。
春をさきがける人形展、小さな中にも贅を尽くした姿をぜひ間近でご覧ください。
西宮神社の祭典「十日えびす」に合わせて、毎年恒例の堀内ゑびすコレクション展を開催いたします。今年度はコレクションから、福の神が描かれためでたい浮世絵をご紹介いたします。
浮世絵は現世を楽しむ人々の生活に密着するものとして江戸時代に生れました。木版画として量産され、庶民が気軽に買える商品として流通したことから、図柄の主題は人々に人気のテーマが選ばれました。
えびす神コレクターであった堀内氏の収集した浮世絵は、えびす神をはじめとする福の神がユーモラスな姿で描かれています。これらの親しみやすく縁起の良い浮世絵は、当時に生きた人々が「福来い」と手に取って観賞したり、部屋に飾ったりして楽しまれたものです。図柄からは、今も昔も変わらない人々の求める幸せの形が見えてきます。新春を迎えるにふさわしい楽しい浮世絵をお楽しみ下さい。
※堀内ゑびすコレクションについて
医学博士の傍ら郷土史家としても活躍された故堀内泠氏(1924~2009)が長年かけて収集されたものです。西宮で生まれ育った堀内氏のコレクションは主にえびす神を代表とする福の神に関するもの、郷土史、風俗風習等の資料で構成されています。
90余年の生涯を日本古来の山桜・里桜の保護育成に捧げた笹部新太郎氏は、桜に関する研究のかたわら、桜にまつわる美術品や文献を収集していました。笹部氏はそのような品々を収集することを通して見識を深めるとともに、自身が桜に興味を持っていることが知れ渡り、情報が舞い込んでくることを期待していました。そうして集められた品々は掛軸・錦絵・酒器・茶器・扇子・短冊など多岐に及んでおり、全国でも有数の桜にまつわるコレクションを形成しています。
今回の展示では、日常の様々な場面における桜の楽しみ方を「飲む」「食べる」「暮らす」「描く」「詠む」「知る」6つのテーマからご紹介していきます。
穏やかな春の日差しの中で咲き誇る桜は私たちの目を楽しませてくれますが、美術品の中に表現された桜にもそれに匹敵する美しさがあります。日々の様々な場面で私たちを魅了してくれる作品たちをぜひご堪能ください。
四季を感じる美術品、歴史を感じる史料、どれも興味深いな。
お酒や桜以外にも、色々な展覧会が開かれているのね!!