こんにちは。9月に入りましたが、まだまだ残暑が厳しいですね。
酒ミュージアムでは引き続き、酒づくりに関わる微生物の展示「お酒でのぞくミクロな世界」展を開催中です(~11月23日まで)。これに関連して、酒トークでも「シリーズ お酒と微生物」をお届けしています。第2回の今回は麹についてご紹介します。
麹と言えば、近年では「塩麹」ブームが起こるなど、一般家庭にもずいぶん定着してきた微生物と言えるかもしれません。この他、和食の基本的な調味料である、いわゆる「さしすせそ」の内、す(酢)・せ(醤油)・そ(味噌)をつくる際は麹の力が欠かせません。もちろん酒造りにも欠かせない微生物で、江戸時代に清酒がつくられるよりもはるか昔、古代の酒づくりにも使用されていたと考えられていています。
さて、このように大事な仕事をしている麹は、どのようにつくられているのでしょうか?麹菌は微生物と言っても、数が増えると白くもやもやとした姿が見えるため、その存在は江戸時代以前に知られていました。そして、江戸時代には造り方もある程度確立されていました。江戸時代の産業について紹介した『日本山海名産図会』には酒造りの方法も紹介されているのですが、その中には「麹蘗(もやし) かならず古米を用ゆ、蒸して飯とし、一升に欅灰二合許(ばかり)を合せ、莚幾重にも包て、室の棚へあげをく事十日許(ばかり)にして、毛醭(け)を生するをみて、是を麹蓋の真中へつんほりと盛りて後蓋一はいに掻ならすこと二度許(ばかり)にして成るなり」と、かなり具体的に麹のつくり方が記されています。「一麹・二酛・三つくり」という酒づくりの格言があるように、昔から麹づくりは大変重要な作業と認識されていて、酒蔵で働く蔵人の中でも、責任者である杜氏が特に信用を置く人物が担当していました。また、この麹づくりの責任者を経験すると、杜氏への昇格も見えるという立場でした。
では、麹はいったいどんな働きをしているのでしょうか?ここでは酒づくりを例に見てみましょう。酒づくりに必要な麹菌は、アスペルギルス・オリゼーという名前が付けられています。お酒づくりでのA.オリゼーの仕事は、酵素を出して分解することです。例えばお米に含まれるデンプンを、A.オリゼーが出すアミラーゼという酵素で酵母が大好物の糖に分解します。この糖を食べてアルコールを出してくれる酵母については、次回ご紹介いたします。
次回はシリーズ最終回。酵母が主役の酒トークも、是非ご覧ください。
江戸時代は米の時代やね。