皆さん、こんにちは。先月は春季展の展示替え作業のため、コラムを更新できず失礼いたしました。準備しておりました、令和4年 春季展 笹部さくらコレクション「桜のある日々」は現在開催中です。ぜひご来館ください。
さて今月は、ササベザクラについてご紹介していきたいと思います。まずは、その来歴から簡単にご紹介しましょう。
昭和35年(1960)、笹部新太郎さんは大阪市北区から神戸市東灘区岡本へ引っ越します。その後ほどなくして、岡本の自宅の庭に桜が自生していることに気づきました。その桜が成長するにつれて、今まで見たことがない桜であると気づいた笹部さんは、昭和39年(1964)から成長記録をつけるようになりました。
当時の記録によると、枝張は東西9尺(約270㎝)・南北8尺(約240㎝)、幹周は3寸8分(約11㎝)、樹高は1丈1尺8寸(約350㎝)となっています。そして、芽生えてから5年目に花をつけたことから、「五歳桜」の名で呼ぶようになります。
笹部さんはここから毎年同じ時期に記録をつけ、この桜がぐんぐんと成長する様子に注目していました。記録をつけ始めてから12年目の昭和51年(1976)5月4日には、根元の幹周は2尺6寸(約78㎝)、胸の高さの幹周りは2尺3寸(約69㎝)にまで成長しています。根元の幹周りで比較すると約70㎝もの成長ぶりでした。 この桜は笹部さんの死後、昭和60年(1985)に元東京農業大学教授の林弥栄氏によって新品種・ササベザクラであると認定されました。淡紅色の半八重咲で、中央付近の花弁が立つように咲いているのが特徴です。
ササベザクラは今でも様々な場所で見ることができます。
ササベザクラを見ることのできる代表的な場所が「岡本南公園(桜守公園)」で、ここは笹部さんの岡本の邸宅跡地です。上でご紹介したササベザクラの原木は残念ながら既に枯死してしまって現存していませんが、同じ場所には取木苗から育成された2代目が植えられています。その他にも、実生や接木・挿木など様々な方法で育てられたササベザクラを見ることができます。
また、酒ミュージアムのある西宮市でも、市営の「北山緑化植物園」でササベザクラを見ることができます。ここにあるササベザクラは原木から接木によって分けられたもので、今では写真のように大きな木に成長しています。
他の桜の品種に比べて見ることのできる場所は少ないかもしれませんが、ぜひ一度は見ていただきたい桜です。このコラムが更新される頃には既に散りかけているかもしれませんが、ぜひお近くの方は足を運んで見てください。
次回もお楽しみに!!
桜を描くことへの情熱を感じるわ!!