皆さん、こんにちは。2025年も引き続き、笹部さくらコレクションや桜について掘り下げた情報を当コラムより発信していきますので、今年もよろしくお願いいたします。
植物に関心を寄せていた笹部さんですが、その一方で動物にも深い興味を示していました。その代表例が鳥類です。笹部さんは、鳥類は植物の実を食べ、フンによって種子を遠くへ運ぶことで新たな植物が芽生えるとして、生物多様性に欠かせない役割を担うという考えを持っていました。桜の研究を行っていた演習林「亦楽山荘(宝塚市武田尾)」では、野鳥を呼び込むために自作した巣箱をかけたり、営巣したオオルリの様子を見守ったりしていました。亦楽山荘にやってきた様々な鳥類の鳴き声を聞き分けて記録をつけており、一時期は三光鳥までやってきたこともあったと、自叙伝『櫻男行状』の中で当時の様子を回顧しています。桜の園は鳥の楽園でもあったのです。
また、犬も好きだったようで、山での作業を行う園丁が仔犬を連れてきた際には、激しいじゃれつきで服が傷んでも意に介さず、「それでも犬のいる山は明るい」と、愛情深さを見せています。長らく世話をしていた飼い犬を亡くした際には、大阪の邸宅から亦楽山荘まで運んで埋葬もしていました。
動物を慈しむ一方で、実りの多い山となった亦楽山荘は食害に悩まされることも多々ありました。特に実生の桜苗の新芽を野兎が食してしまうことがあり、対策として金網を貼っていたという記録が残されています。また、戦時下で食料の乏しい時代には、貴重な食料である柿や栗を大猿に喰い荒らされてしまうこともありました。それまでは山の彩りの一部として動物愛護を掲げていた笹部さんでしたが、遂に駆除を決意したこともありました。大猿が捕獲された折には、地域の新聞に写真付きで記事が掲載されたほか、交流のある友人から、このことを題材とした詩文を恵贈されたこともありました。
今回ご紹介した笹部さんと動物のかかわりは、演習林での作業記録である『亦楽山荘記録』に自筆で記されているものです。現在、当館ではこの自筆記録56冊を一挙公開する展示を開催中です。捕獲されたうりぼう(仔猪)との話など、桜や人との交流も含めて、コラムでは紹介しきれなかったエピソードも数多く展示しています。ずらりと並んだ笹部さんの歴史を観に、是非とも足を運んでいただけますと幸いです。
次回もお楽しみに!
笹部さんの人生を語る上では欠かせないお仕事ね!!