桜・梅・桃 花のそっくりさん

2025.04.15

 皆さん、こんにちは。今年は咲き始めの花冷えのお蔭か、いつもより長い期間桜を楽しめたような気がする春となりました。

 現在、酒ミュージアムでは春季展「桜歌爛漫」を開催中です。和歌や俳句など、詩歌の世界に表現される桜をご紹介しています。以前桜の色について紹介したコラムのタイトルにもあるように、和歌の世界では「花」といえば桜のことを連想する方がほとんどかと思います。この認識はいったいいつ頃から続くものなのでしょうか?

 奈良時代に成立したとされる日本最古の歌集『万葉集』には、約4,500首の歌が収められています。このうち、梅についての歌は約120首、桜についての歌は約40首が収録されています。
 一方で、平安時代に成立した『古今和歌集』では、全1,100首のうち、梅についての歌は18首、桜についての歌は70首が収録されています。このことから、『万葉集』の頃は「花」=「梅」、『古今集』の頃は「花」=「桜」という認識が主流になっていたことがうかがえます。
 奈良時代には遣唐使によって大陸の文化が取り入れられたことから、漢詩の題材にも多く詠まれていた梅や桃の花を愛でることが文化人の中では主流となっていました。
 しかし、平安時代以降には、寛平6年(894)に遣唐使が廃止されたこともあり、日本の風土や感性に合わせた文化である国風文化が発展していきました。この流れを受け、元より国内に自生していた桜を愛でる文化が定着していきました。
 内裏に植えられている「左近の桜」も、かつては梅であり、桜に植え替えられたという逸話が残っています。

紅梅 蕾が単独で枝に互い違いについています

 さて、ここまで話題にあげていた桜と梅、桃ですが、いずれも同じバラ科で、よく似た花を咲かせます。街中で見かけた際にこれはどれだろう?と思った経験がある方も多いのではないでしょうか。皆さんは見分け方をご存じですか?

 梅は3種の中で最も早い時期から咲き始め、地域にもよりますが1月下旬から4月下旬に咲くことが多いです。桃と桜は3月中旬から、ほぼ同時期に咲き始めます。

 花の咲き方や形でも区別することができます。梅は花柄がなく、枝から直接咲いているように見えます。1節につき1輪が咲くのも特徴です。桃の花は花柄が短いため、梅のように枝から咲くように見えますが、1節に2輪の花がつくため、梅よりも花の密度が高くなります。また、ほとんどが葉と花が同時に出てきます。一方で、桜は1節から花柄が長く伸び、複数の花が咲きます。

桜 花柄が1節から複数生えています

 花びらの形は、梅は丸みを帯びていますが、桃は細く尖っていることが多いです。桜は切れ込みが入っており、ハートのような形をしています。

 これらの違いを意識して花を見てみると、新たな発見や出会いがあるかもしれません。

 次回もお楽しみに!

酒くん

笹部さんの桜への愛は、ぼくの酒への愛と通じるものがあるな。

桜子ちゃん

桜を取り巻くあらゆることに、興味をもってくださると嬉しいわ。